KPI構造設計
チラシを何百パターン変えても成果が出なかった理由は、チラシではなかった
2026.04.16
- 課題
- チラシを何百パターン変えても予約数が動かない。「次に何を変えれば?」が社内で誰も答えられなかった
- 支援内容
- 「配布→予約完了」の間にある5つのステップを全て数値化。どこで人が離脱しているかを特定した
- 成果
- たった1ページの改修で予約数が全パターン約2倍に。しかも改修したのはチラシではなく、誰も疑っていなかった予約フォームだった
目次
チラシを何百パターン変えても、成果が動かない
全国展開する店舗型ビジネスのクライアント。集客はチラシで行い、QRコードからチラシ専用の申込ページ(以下LP)へ誘導、そこから店舗予約の完了(以下CV)につなげていました。
成果を出すために、チラシのデザインとコピーを変え続け、累計数百パターンをテスト。しかし、どのパターンに変えても予約数は横ばいで、「次に何を変えるべきか」が見えない状態が続いていました。
見えていたのは「配布数」と「予約数」だけだった
クライアントが追いかけていた数字は、配布枚数、LP到達数、予約完了数、そして予約率(配布数に対する予約完了の割合、以下CVR)でした。以下は同時期に配布していた3パターンの実績です。
※ 以下の数値は、実際の傾向をもとに再構成したサンプル値です。
注目すべきは、LP到達と予約完了の「間」が全て「???」になっている点です。途中で何が起きているか、誰も把握していませんでした。
| 配布数 | LP到達 | ??? | ??? | ??? | 予約完了 | CVR | |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| チラシA | 10,000 | 280 | — | — | — | 23 | 0.23% |
| 転換率 | — | 2.8% | ??? | ??? | ??? | — | — |
| チラシB | 10,000 | 210 | — | — | — | 17 | 0.17% |
| 転換率 | — | 2.1% | ??? | ??? | ??? | — | — |
| チラシC | 10,000 | 370 | — | — | — | 30 | 0.30% |
| 転換率 | — | 3.7% | ??? | ??? | ??? | — | — |
どのパターンに変えても、CVRは0.17%〜0.30%の範囲に収まっていました。数百パターンを試しても数字はほとんど動きません。「チラシの改善だけでは限界がある」という感覚は社内にもありましたが、「???」の中身が見えない以上、次の打ち手を判断できない状態でした。
配布から予約完了まで、実は5ステップあった
まず取り組んだのは、この「???」を埋めること。ユーザーがチラシを手に取ってから予約を完了するまでの全ステップを洗い出すことでした。
調査の結果、実際のユーザー導線は以下の5ステップで構成されていました。
- チラシ配布
- QRコード → LP到達
- LP → 予約フォーム①(日付選択)
- フォーム① → フォーム②(個人情報入力)
- フォーム③(確認) → 予約完了
クライアントが数字を追っていたのは、このうち①(配布)、②(LP到達)、⑤(予約完了)の3点だけ。③と④は計測されておらず、途中で何人が離脱しているかが見えていませんでした。
見ていなかったのは意識の問題ではありません。「チラシ→LP→予約完了」の3点で計測が完結していたため、そもそも「間を測る」という発想が出にくい状態でした。日常的に回している導線ほど、途中のステップは「当たり前」として見えなくなります。
全パターン共通で、フォームの通過率だけが異常に低い
全ステップの計測環境を整え、「???」を埋めました。まず改めて、計測前の状態を再掲します。
| 配布数 | LP到達 | ??? | ??? | ??? | 予約完了 | CVR | |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| チラシA | 10,000 | 280 | — | — | — | 23 | 0.23% |
| 転換率 | — | 2.8% | ??? | ??? | ??? | — | — |
| チラシB | 10,000 | 210 | — | — | — | 17 | 0.17% |
| 転換率 | — | 2.1% | ??? | ??? | ??? | — | — |
| チラシC | 10,000 | 370 | — | — | — | 30 | 0.30% |
| 転換率 | — | 3.7% | ??? | ??? | ??? | — | — |
この「???」を全て埋めた結果が以下です。太字になっているフォーム①→②の転換率に注目してください。
| 配布数 | LP到達 | フォーム①到達 | フォーム②到達 | フォーム③到達 | 予約完了 | CVR | |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| チラシA | 10,000 | 280 | 85 | 27 | 24 | 23 | 0.23% |
| 転換率 | — | 2.8% | 30.4% | 31.8% | 88.9% | 95.8% | — |
| チラシB | 10,000 | 210 | 63 | 20 | 18 | 17 | 0.17% |
| 転換率 | — | 2.1% | 30.0% | 31.7% | 90.0% | 94.4% | — |
| チラシC | 10,000 | 370 | 112 | 36 | 32 | 30 | 0.30% |
| 転換率 | — | 3.7% | 30.3% | 32.1% | 88.9% | 93.8% | — |
LP→フォーム①は全パターンで約30%、フォーム②以降も88〜95%。LP以降の数字は全パターンでほぼ同じでした。LPとフォームは全パターン共通なので、当然の結果です。
しかし1箇所だけ、明らかに異常なステップがあります。フォーム①→フォーム②の通過率が約32%。他のステップが88〜95%で推移しているのに対し、ここだけ約3人に1人しか通過できていません。
どのチラシを使っても成果が動かなかったのは、全パターンが共通して通るフォームに詰まりがあったからです。チラシを何百パターン変えても改善しなかったのは、改善すべき対象がチラシではなかったことを意味していました。
1ページ直しただけで、予約数が全パターン2倍に
詰まっている場所が特定できたので、改善の対象は明確です。前章で見たとおり、フォーム①→②の通過率が約32%でした。フォーム①の画面構成を改修した結果、同じ列(フォーム①→②)の通過率が青字に変わっています。
| 配布数 | LP到達 | フォーム①到達 | フォーム②到達 | フォーム③到達 | 予約完了 | CVR | |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| チラシA | 10,000 | 280 | 85 | 58 | 52 | 49 | 0.49% |
| 転換率 | — | 2.8% | 30.4% | 68.2% | 89.7% | 94.2% | — |
| チラシB | 10,000 | 210 | 63 | 43 | 39 | 37 | 0.37% |
| 転換率 | — | 2.1% | 30.0% | 68.3% | 90.7% | 94.9% | — |
| チラシC | 10,000 | 370 | 112 | 76 | 68 | 64 | 0.64% |
| 転換率 | — | 3.7% | 30.3% | 67.9% | 89.5% | 94.1% | — |
フォーム①というたった1ページの改修で、通過率が約32%から約68%へ改善。全パターンの予約数が一律で約2倍に増加しました。
LPとフォームは全パターン共通のため、改善の効果も全パターンに等しく波及しています。その中で最も予約増加が大きかったのはチラシC(+34件)。Cはもともと最も多くのユーザーをLPへ送り込んでいたため、詰まりの解消で最も大きな恩恵を受けました。
改修前は「どのチラシも大差ない」と思われていました。しかし途中の数字まで全て見通すと、チラシCが最もLP到達率が高く、フォーム改修後にはCVRでも明確なトップ(0.64%)になっています。
従来は「CVRが伸びない → 次のチラシパターンを制作」の繰り返しでした。しかし問題はチラシではなく、全パターンが共通して通るフォーム導線にありました。「どこを直すか」の判断を先に整えたことが、最小の改修で最大の成果につながっています。
営業・採用・SESにも同じ構造がある
施策の改善には、入口と出口だけでなく、その間にある全てのステップを数値化することが前提になります。どこで人が離脱しているかが見えなければ、何を直せばいいのか判断できません。
チェックポイントはシンプルです。自社の施策で「入口と出口の数字は見ているが、途中のステップは把握していない」プロセスが一つでもあれば、そこに改善余地がある可能性は高いです。
たとえば人材派遣・SES企業であれば、「案件獲得→候補者マッチング→面談設定→稼働開始」の各通過率を把握しているでしょうか。「案件は取れているのに稼働率が上がらない」という状態は、このプロセスのどこかに詰まりがあることを意味しています。
最初のステップは、自社のプロセスを「ステップに分解して、各通過率を書き出してみる」こと。書き出した時点で「???」になる箇所があれば、それがそのまま改善の起点です。
※ 他の事例では、見つけた詰まりを「動く運用」に翻訳するプロセスと、複数の改善案から組織の実態に合う一手を選ぶプロセスを扱っています。
